ブクゑメモ

本読む苔の読書メモ。好きにやっちゃいましょうよ、好きに。

読了メモ・2017.09

「ブログ記事をひとつ追加した」という小さな達成感を得るために書き始めた読了メモ。去年9月分から滞っているとは、どういうことだ。

 

『いずれは死ぬ身』

柴田元幸編訳

「淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中のある人とすみかと、またかくのごとし」浮世のうたかた、いずれは死ぬ身。ブリーズ・’DJ・パンケーク(ふざけた感じがするけどほんとにこれがペンネーム)『冬のはじまる日』冬の風、低く灰色の空、雪のにおい。寒さが感じられる一編。ウィリアム・バロウズ『ジャンキーのクリスマス』言わずもがなの『キル・ユア・ダーリン』案件。『そしてカバたちはタンクで茹で死に』では予兆として描かれていたものが現れたような一編。

 

高山右近とその時代』

川村信三

はい、偏愛。多くは語りません。高山右近のイメージは禁教後江戸時代のものが根強く残っているし、『信長の野望』ではそんなに選ばれないキャラでしょ?我らがユスト高山右近茶の湯の世界でもそれと知られた人物で、勇猛果敢な戦国武将なのよ。ちなみに、息子の夏休みの宿題『好きな戦国武将』で高山右近を選んでくれたら代わりにやると鼻息荒く申し出たのは、もちろんわたしです。

 

『ずっとお城で暮らしてる』

シャーリィ・ジャクスン

深緑野分さんオススメの一冊。ふらりと書店に入って予定外に買ってしまった。ミステリー仕立てで、あちこちにたくさん伏線が張られていき、クライマックスでその全てが回収され、あとになんとも言えないものが残る。無条件の愛と孤独と悲しさと。深緑さんの『戦場のコックたち』と合わせて読むと倍の倍楽しめる作品。衝動買いしてよかった。

 

『ヨーロッパ文化と日本文化』

ルイス・フロイス

はい、偏愛。『フロイス日本史』でちょいちょい顔を出す、わたしの好きなフロイス。自身のものと色々な人から集めた見聞録。当時の人々の衣食住から道の歩き方、酒宴での作法、価値観などが記録されている。偏見、誤解、誇張などを差し引いても、ルネサンス時代のヨーロッパから来日した知識人の手による紀行文として読んだらおもしろかった。「えーー?」って眉をひそめることが多かったのは「日本文化」について書かれたもの。偏愛案件なので、多くは語らない。

 

『パイド・パイパー』

これまた深緑野分さんオススメ。ちょうど映画『ダンケルク』を観た後だったので、興味がそっちを向いていたというのもある。どっち方向だ。主人公ハワード氏は『ダンケルク』ドーソン氏と重なる部分がたくさんある。「ハワード氏が縁もゆかりもない子供達を連れて逃げる」話。おとぎ話のように語られるけれど、戦争ものが苦手なので(だけど読む)そこここで怖くなって本を閉じた。おとぎ話のようでいて子供の無邪気さを隠れ蓑にしていないところが良かった。最初から最後まで、日常が戦争に侵されていく緊迫感。それでも「人間は戦争より大きい』のだ。さすが、深緑セレクト。

 

『氷の花たば』

アリソン・アトリー

『時の旅人』がとても良かったので、図書館で見かけて読みたくなった。『時の旅人』にあった骨太な部分と柔らかい風景描写、後者が詰まった小さいおとぎ話集。風景とおはなしが溶け合っていた。

 

『美について』

ゼイディー・スミス

別途記事を書いたので詳細省略。とにかくガツンときた作品だったのは、何度でも言いたい。「ノット・フォー・ミー」だろうという事前期待も手伝って、重いブロウを食らった。実のところ、今でもこれはノット・フォー・ミーだと思う。だからと言って読めないわけではないし、楽しめないわけでもない。偏愛と同時に開くのもまた良し。学んだ。

 

 7冊。少ない。でも暑い暑い具合悪いと言ってたわりには、よく読んだ。