ブクゑメモ

本読む苔の読書メモ。好きにやっちゃいましょうよ、好きに。

読了メモ・2017.10

 

どんどんいくよぉ!今3月だからさ。まだまだ!…って書いたままになってて、そして4月… しっかりしろ!!読書メモと一緒に、当時のことを色々思い出した。

 

ハワーズ・エンド

E.M.フォースター

「英国風俗小説」というカテゴリーがあるそうだ。『ハワーズ・エンド』はこのカテゴリーとのこと。『美について』の感想を、自分なりにもう少し掘り下げられたらいいなと読んだので、これまた事前期待値があまり高くなかった。ノット・フォー・ミー案件だと思ってたら、わたしはこういうのが好きだってことが分かった。

 

アイスランドへの旅』

ウィリアム・モリス

そう、あのウィリアム・モリス。憧れの地アイスランドへ行きて帰りし2ヶ月余のモリスさん聖地詣日誌。サーガを愛するモリスさん、「ここでニャールサーガのグンナルが!」「蛇舌のグンラウグが!」「めんどりのソーリルの!」アイスランドの自然は厳しく道は険しくつらい旅だったろうに、終始テンション高めかつ情熱たっぷり。

とにかくモリスさんの映像的描写がさいこうのアイスランド紀行文。パンビジョンがすごい。180度見渡して、それを緻密に文章で再現。映像と詩が同時に存在する。観察力もさることながら、モリスさんの記憶力がすごい。毎晩、就寝前にその日の記録をある程度まとめていたそうだけど、目にしたものをよくここまで覚えているものだと感心する。

旅の始まりからモリスさんがやたらと落し物、失くし物をする。後から来る知らない人が拾って届けてくれるのもいい(そしてモリスさんのご機嫌がよくなる)。あるとき、日誌やら「これだけは失くしたくない」ものが入っていたリュックを別の人に預けていたら、その人がリュックを失くしてしまう。激しい嵐に巻き込まれたせいなのに、疲れもあってついその人を「殺してやる!」と強く脅してしまうモリスさん。その人が来た道を戻り、3時間かけてリュックを見つけてきてくれたら、「ほんとにごめんね、ありがとう、ほんとにごめんね」とめっちゃ謝罪(そしてそれをちゃんと日誌に書いといたりする)。

大好きなアイスランドを巡ってテンション高めと思いきや「白状すると」と言い置いて「ほんとは泣きそうだった」と日誌につらい気持ちを吐露しちゃうモリスさん。筆者の心情吐露は紀行文のおいしさ。がんばれぼくらのモリスさん!

アイスランドに夢中になる一方で、やたらめったらシラミに怯えている。行く先々で宿を提供してもらうんだけど、「屋根と壁にちゃんと苔を使っているのでこのうちはまあまあだな」と納得するかと思いきや、寝床を見て「絶対シラミいる!やだ!」と心の中で騒ぐ。でもモリスさん、実際にはあんまりシラミの被害にはあっていなかったようだ。

新しく雇ったガイド、「顔が獰猛だから」と言い放ち、嬉々として「不潔狼」とあだ名をつけるモリスさん(不潔狼、実際は穏やかでいい人だったらしい)。テントを張って自炊しなきゃいけない時もあって「実はオレには隠れた料理の才能が」と得意げに日誌に書き込むモリスさん。憧れのギャウ、息も切れ切れに上って「厚着してるしブーツがさ」と言い訳したら、同行してくれた牧師さんに「それに太ってますからね」と返されて「ギャフン!」なモリスさん。

読後にモリスさんの後を追って画像検索したら「1800年代前半に、よくもこんなとこを、馬とポニーだけで!」と驚くほどの険しい土地。気候風景だけでなく、睡眠や食事、出会った人々をモリスさんはとても鮮やかに描いている。とにかく風景描写の美しさ、鋭い観察力と豊かな表現力、そして何よりちょいちょい出てくる素のモリスさんが良き。こんなに長く書いたのは、いちばん好きと言える紀行文に出会ったからだと思う。

 

『百年文庫・灰』

中島敦石川淳島尾敏雄

近現代日本文学のクラスで読んだ作家3人だ、と懐かしくなって。三人三様、それぞれの視点からの戦争、生死感。

 

『百年文庫・罪』

ツヴァイク魯迅トルストイツヴァイク『第三の鳩の物語』はあまりわたしの好みではなかった。魯迅『小さな出来事』は好み。意外にもトルストイ『神父セルギイ』がいちばん好みだった。『アンナ・カレーニナ』積んでるのに。

 

『ゴールドフィンチ』1〜4

ドナ・タート

友人に熱く熱く薦められた。「ここからどうなっちゃうの?!」と、次の展開が読めなくて終始不安。どこに向かっているのか、全然予想がつかない。画家の筆が走るまま、その動きを追っていく。そしたら最後に絵が現れた。そんな印象。熱量は最後まで衰えない。ハッとするような一文に出会う頻度が高い。舞台転換が豪快。静と動のコントラストが効いている。美しく美しく綴られた、おつらみの連続。子供の無力感、喪失を引きずって生きていくこと。つらいんだけど、やめられない。美しくて、脆くて、儚くて、美しい。美しいって何回言ってる?

 

『たのしいムーミン一家』

トーヴェ・ヤンソン

岸本佐知子さんのインタビュー記事を読んだのがきっかけで、トーヴェ・ヤンソン祭りが始まった。子供の頃夢中になって読んだお話を再読するって、難しいなと改めて思った。違う角度から見えそうで見えないものをつかもうとすると、子供のわたしが邪魔をする。トフスランとビフスラン、飛行おにがお気に入りなのは変わらなかった。

 

『島暮らしの記録』

トーヴェ・ヤンソン

なんでそこまでしてわざわざそこに住む?が素直な感想。自分たちだけの世界を作るというのは、大変な作業だな。隠棲を隠棲をと求めていくうちに、海に浮かぶ岩だらけの島、っていうかでっかい岩、に小屋を建てて住むヤンソンさんたち。どこからが事実でどこからがフィクションだか分からないけど、少なくともこれは島じゃなく岩だね。ヤンソンさんは風力階級が大好きらしく、ビューフォート階級という言葉がたくさん出てくる。ビューフォート3、まだ平気。ビューフォート7!やばい!

海に浮かぶでっかい岩に小屋を建てて暮らすとどれだけの風が吹くかで生死が決まるのだろう。わたしはビューフォート階級を気にしたことがないのでピンとこないけど。ボートでの移動。小屋を建てるために地ならし。必要最低限の電力のための蓄電器の起動。風雨、波、岩。海、海、海。そしてボートに乗って、また街に帰る。サバイバルめいたバカンス。めっちゃ不便な場所には自分たちだけの世界を作ることができて、めっちゃ不便な場所には居心地のいい沈黙がある。次第に共に過ごすことを疑問に思うような沈黙。夜の海に吸い込まれていく沈黙。

 

『トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界』

冨原眞弓

そもそも記事の中で岸本佐知子さんが取り上げていた一冊。持病の「カタカナの地名&ヨーロッパの地理分からない」を発症して、読了までに時間がかかったけど、読んでよかった。フィンランド史、対スウェーデン、ロシア=ソヴィエト、ドイツ。トーヴェの母シグネの個人史、ヤンソン家の歴史、トーヴェの個人史、諷刺雑誌『ガルム』の歴史。読んでよかった。外国の人は日本のことを分かってない、誤解しているというのをよく見聞きするけど、わたしも北欧のこと分かってなかった。みんなは分かってるの?まだまだ知らないことがあるって、楽しい。

 

11冊。制限がある方が読書にこだわるようだ。