読了メモ・2017.5
メンタルにくることばかりが起きた5月。反面、読書は充実していた。
『シチリアを征服したクマ王国の物語』
ブッツァーティの子供向け物語。クマがかわいい。「クマはクマとして」という寓意的なストーリーの中に、子供向け以上のなにかが。ブッツァーティったら!(好き
『山猫』
ランペドゥーサ
シチリアつながりで。同作のヴィスコンティ監督映画が好きで好きでしょうがなくて、リマスター版公開記念の特別装丁の表紙(アラン・ドロンとクローディア・カルディナーレに吸い寄せられたわけではない!むしろ、バート・ランカスターだ!)で、デデーン!と平積みされていたのでフラフラと買ってしまった。「原作か、映画化作品か」に関しては「作品の解釈は、みんな違ってみんないい」派なのだが、これは原作も読んでよかった。「盛者必衰の美学」、止まった時間の中でジワジワと崩壊していく様。その美しさは、原作も映画も同じ。原作と映画を並べると、ヴィスコンティが原作のどの部分にウェイトを置いて映画化したかが、分かる。しかし、またもや持病の「カタカナ弱い病」が出て、特に地名でよく混乱した。あと地方性というか、「ピエモンテ人はそういうものだ」「ロンバルディアのやつらは」みたいなのも実感としてはピンとこなくて、「どこにでもそういうのはあるんだなー」くらいの感想で止まってしまった。残念。そして、カタカナ苦手。
『ケルベロス第五の首』
ここからジーン・ウルフ祭りが始まる(ドンドコドン)。これはすごかった。なんでいままでジーン・ウルフ読まなかった?すでに起きたことへの預言書のような作品だった。
『ヴィーナス・プラスX』
名前は知ってるけど作品は読んだことなかった、という作家。ジェンダー観をめぐる小説は、ときとしてすごくつらくなるので、手を出すのに躊躇する。この作品は、時代背景的に「ラブ&ピース」炸裂というか、マインド・エクスパンションというかセプティックタンクというか「箱の外で考える」というか… 自由だった。
『ウィザード・ナイト ナイト I 』
『ウィザード・ナイト ナイト II 』
「わーい、ファンタジーだいすきー」だけでは読み切れない作品がある。これはそのひとつ。難解なのではなく、ヒントや伏線や、散りばめられ張りめぐらされたものがたくさんあって、ポジティブな意味で、読者が「読む」ことにかなりコミットすることになる。自分はそもそも「それ」であるのか、「それ」だと称することで「それ」になるのか。最後まで読んだ時、丹念に織られたタペストリーを俯瞰できる。読み終わったとき、圧倒されて泣いてしまった。
ジーン・ウルフ三作とシオドア・スタージョンは、期せずして「愛」の物語だった。