ブクゑメモ

本読む苔の読書メモ。好きにやっちゃいましょうよ、好きに。

読了メモ・2017.6

えっ?!もう折り返し地点きた?!と誰もが思う6月。偏愛している日本キリシタン史の復習・筋トレも再開。

 

『目の見えないアスリートの身体論』

伊藤亜沙

「ヒューマン・ストーリーとして感情レベルの共感」が狙いではない。「エントロピーの小さい空間で身体の限界に挑む」とはどういうことなのか。ガチでアスリートの身体論。前半は「目が見えない」知覚、身体論を解説。後半は各競技でトップのアスリートへのインタビューという二部構成。「同じ問題を違うやり方で解くので、結果違うゲームになる」という説明が、すとんとはまる。わたしの世界と彼らの世界は同心円。やり方が違うだけで、同じ世界。平易で構えなくても読める内容。興味のある方は是非読んでほしい一冊。

 

『ウィザード・ナイト ウィザード I 』

『ウィザード・ナイト ウィザード II 』

ジーン・ウルフ

生きているうちに知ることができてよかったと思える作家のひとり。入れ子と縦糸横糸の張り巡らせ方が、とにかくすごい。カミング・オブ・エイジって、成長と共に愛を知る流れだと思うのだが、これはとにかく全編に愛がドバドバ溢れる作品なのだ、ということが読んだ後に分かる。泣いた。

 

『異形の愛』

キャサリン・ダン

読みながら、何度かケアリーの作品を思い出した。この作品もケアリー作品も、これまた愛がサブテーマのひとつだと思う…んだけど、この作品はとにかく容赦ない。PC?Tell it as it is. 婉曲表現?配慮?あるがままですでに美しいのに、なぜ?!わたしたちは美しく気高い!最初はあまりの露骨さにヒャッとなったが、愛しかなかった。作品そのものが愛おしい。

 

マルタン・ゲールの帰還』

ナタリー・Z・デイヴィス

「おい!コラ!マルタン!」が、感想。突然いなくなったマルタン・ゲールが帰ってくる。しかしそれはマルタン・ゲールを名乗る別人。数年後に本物のマルタン・ゲールが帰ってきて… というフランスでは有名な16世紀に起きたマルタン・ゲール事件。この本で初めて「歴史叙述的な語り」というものを読んだ。多角的、学際的。なるほどこれはおもしろい。

 

『女性を弄ぶ博物学

ロンダ・シービンガー

『魔女・産婆・看護師』案件。科学の分野から女性が完全にしめだされ、それがいつまでどのように続いたか。リンネの造語「ママリア(哺乳類)」を軸に展開される… のだが、ちょっとあちこちにとっちらかって、ジェンダー論が効いてこないような印象。しかし「哺乳」という分類は分類学上どうよ?なんで「乳」でまとめたよ?っていう根拠と当時の科学、ジェンダー論を知ることができた。順番的には、これより先に著された『科学史から消された女性たち』を読んでからこちら、の方がよかったかも。

 

『MONKEY vol.12 特集 翻訳は嫌い?』

柴田元幸責任編集

リディア・デイヴィスノルウェー語を学ぶ』が読みたくて。横目で見ながら通り過ぎておいて、結局いつも買ってしまうMONKEY。購読してもいいのではないか。原書で読む楽しさと、訳書を読む楽しさがある。元の文章を思考のフィルターを通して分解したり組み立て直したりして、最終的にまた元の文章に戻す。たくさんの引き算足し算引き算。この作業を経た文章を読むのが、わたしはとても好き。詳しくは別途、単体で記事を書こうと思う。

 

『MONKEY vol.4 特集 ジャック・ロンドン新たに』

柴田元幸責任編集

vol.12の巻末、バックナンバーを見て気がついたら注文していたので、これは本当に購読した方がいい。連載、川上弘美『このあたりの人たち』と岸本佐知子『死ぬまでに行きたい海』も読み逃したくないし… 購読やな。

ホリゾンタル寒冷地偏愛なので(雪山のような縦寒冷地ではなくて、タイガとか北極みたいな横寒冷地)、それでジャック・ロンドンも好きなのかなと思っていたけど、そうじゃないみたい。わたしはジャック・ロンドンの文章が好きなんだ。あと、ホリゾンタル寒冷地では犬なしには生き残れない(どころか、肝心なところはかなり犬に頼っている)んだけど、ロンドンは寒冷地でのサバイバルを、犬の目線から書いてしまう。犬だから知覚に限界がある、のではなくて、ホリゾンタル寒冷地では思考も行動もわんわんと同じくらいシンプルにしないと生き残れない、ってことなんですよ。それをまた、ものすごくシンプルな文章(「名詞と動詞だけの構成」)で、語る。計算してシンプル、というよりは時間との勝負でシンプルなのかもしれないけれど、それにしたってぶっつけであんなに簡潔で完成された文章をパッと書けるのがすごい。わんわんと生きるホリゾンタル寒冷地。ジャック・ロンドン。良き。

 

キリシタン音楽入門』

皆川達夫

筋トレとして。歴史的背景はスラスラ読めたが、とにかく音楽の知識ゼロなので、この本が差し出してくれたもの、95%くらい理解できていないはず。

 

天皇キリシタン禁制』

村井早苗

筋トレ。日本キリシタン史関連、いままでよりスイスイ読めるので、分かっていないのに分かったつもりになっているに違いない。「キリシタンの世紀」と呼ばれる通り、100年くらいだし史料も限られているので、同じことばかり読んでいるから「分かった」ように感じるのかもしれないけれど。

タイトル「天皇」よりは「キリシタン禁制」によりウェイトが置かれているイメージ。実際キリシタン禁制はそれぞれの立場から朝幕ともに関わっていたということ。わたしは秀吉の伴天連追放令くらいまでの流れを偏愛しているので、読むものがどうしてもそっち(前半)に偏りがち。バランス取れた栄養、という意味で1587年以降についても、読むように心がける。

 

計10冊。積ん読は一向に減らないまま、2017折り返しております!