ブクゑメモ

本読む苔の読書メモ。好きにやっちゃいましょうよ、好きに。

読了メモ・2017.7

どんどん暑くなってきて、どんどんつらくなってきて、たたみかけるように夏休みが!いつもよりさらに、読書の質が落ちてくるはず… 心してかからねば!

 

『穢れの町』

エドワード・ケアリー

アイアマンガー三部作の第二部。トリロジーの「2」は、「1」と「3」の間にかかるブリッジ… かと思いきや、それ以上だった。視点の切り替えが、いつもより効果的に作用した印象。ケアリー作品は、ジェンダー論でいうと男性学的なテーマがあると思う。どこに連れて行ってくれるのか、最終巻が待ち遠しい。挿絵も、良き。

 

『中二階』

ニコルソン・ベイカー

「2017ボディにきた作品」暫定2位。「小さな主題」だなんて呼ぶのなら、どれだけ小さくできるか見せてやんよ!!!

主人公/語り手独特の価値観で眺める世界。牛乳パックのストローの素材の考察とか、靴紐の結び方とか、もうほんとに、本人にしか意味をなさない小さな小さな小さなことが、たくさんたくさんたくさん… だけどこれは主人公の「内面描写」なのか?写実的描写、そして主人公/語り手を分類(カテゴライズ)するような、導入や前提として明かされるような、事柄は最低限のさらに最低限しか出てこない。それなのに読み手は主人公を詳細に知ることができる。昼休みの終わりに、中二階のオフィスに戻るため、エスカレーターに乗るまでの、小さな小さな大きな話。

 

『虎と月』

柳 広司

友人からの紹介。中島敦山月記』の李徴に息子がいたとしたら。その息子の視点で描かれる『山月記』のリイマジニング、もうひとつの『山月記』。漢詩がたくさんでてきて、それがストーリーの推進力のひとつ。息子による訳が添えられているので、漢詩が苦手なわたしにもやさしい作り。YAとして、高校生くらいの読者を想定しているのかな。そのくらいの年齢の人が、『山月記』と合わせて読むのも、良いかもしれない。

 

『木に登る王』

スティーヴン・ミルハウザー

好きな作家なのに読むためにかなりのエネルギーが必要なのが、わたしにとってのミルハウザー(とマンロー)。古典に明るくないので、あともうちょっとで届きそうな壁に届かない、登ることにすらたどり着かない、で終わってしまった。悔しい。ミルハウザーさんと柴田元幸さんの匠の技がぶつかりあって飛び散る静かな光と音に浸っている感じだった。

 

『忘れられた花園』(上下)

ケイト・モートン

こちらも、いつもの友人からのお薦め。読み終わった友人が「ずっと泣いてる」と貸してくれた。ロマンティック(ロマン主義、のロマンティック)なのかな?と構えて読んだが、そんなことより、わたしも泣いた。ミステリーの枠に収めながら、収まり切らず溢れてくるものが、すごい。意図的に溢れさせているんだと感じたが、ミステリーなのでこれ以上は言わないでおく。ミステリー好きな方には是非読んでほしい。

 

『神秘列車』

甘燿明

「きっとあなたの好み」と薦めてくれた方がいて、それならばと読んでみた。初・台湾小説。一言で言えばマジック・リアリズムになるんだろうけど、実の上に築かれた虚が実を覆い隠すことで、実の実たる痛みが読み手の体にギリギリと差し込まれるかのようだった。幻想では消せない痛み。土地に縛られる。そこから離れ(られ)ない人々。旅立っていく人々。力づくで侵入し、破壊の限りを尽くす支配と暴力。わたし自身をここから切り離してはいけない、と改めて。しかし、痛かった。

 

『書架の探偵』

ジーン・ウルフ

これも上記を薦めてくれた方から。「読了」以外は言いたくない!いいから読んで!わたしの味わったワクワクを、みなさまにも楽しんで頂きたい。

 

『文学効能辞典 あなたの悩みに効く小説』

エラ・バーサド/スーザン・エルキダン

辞典の形式で展開する、ひとくちメモみたいなちょっとした書評。すごい数の小説を扱っていて、追いきれないほど。手元に置いて、ちょっと読みたいなと思ったときに、ランダムに開いて読みたい一冊。

 

『屋根裏の狂女』

サンドラ・ギルバート/スーザン・グーバー

久しぶりに文学批評を読んだ。ジェンダー論批評は、読み応えがある。原書の初版発行が1979年…?ギャップを感じないのは、テーマがブロンテ姉妹だからかな。『ジェイン・エア』と『嵐が丘』くらい、ちゃんと読んでおこうよ… ヴァージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』を再読したくなった。『自分ひとりの部屋』は、いつかもう一度、ちゃんとした感想を書こうと思っている。