ブクゑメモ

本読む苔の読書メモ。好きにやっちゃいましょうよ、好きに。

語りかけてくれる声

難しい本を「難しい」と思う時、自分は筆者が想定している読者じゃないのかな、とちょっとせつない。「知識人」じゃないと得られないものがあるのなら、きっとわたしは生きてるうちはそこには届かないから。ションボリする。「それならば入門書を」と手を伸ばしてみても、なかなか「これ!(ピコーン」というものに当たらない。それでさらにせつなくなるわけだ。

女性学/男性学 (ヒューマニティーズ)

同じ目線から、語りかけるように書かれたもの。目の前にいるかのように語りかけながら「さて、これについて、あなたはどう考える?」と問いかけてくる、その絶妙なタイミング。各章結びにハッとさせられるくだりがあり、それに触発されて各章の内容を反芻したり気になるところを再読したり。そもそもの想定読者はハイティーンの読者の入門書?いやいやどうして、不惑の年を超えた人間にも、学びの機会を与えてくれた。第3章の結びにある「学問の懐に入り内側から食い破る」という一言には、胸をわし掴みにされたね。学問の懐に入るために、それを内側から食い破るためには、自らの内側を探り食い破ってこそ、その先へ進めるのではないか。そういう覚悟で女性学に向き合っている。ギュッとされた。とてもつらい。でも向き合いたい。つらくて痛い。でも、読みたい。食い破りたい。
もうひとつ。入門書としての本書の魅力として、さらに興味を持った読者に次のステップとなる書物をたくさん紹介してくれるところがよかった。このあと、どっちに向かって一歩踏み出すの?好きなのを選んで!という、声。「あれもこれも読みたい読みたい」ってやっているうちに、脳内積ん読がとんでもないことになった。

ジェンダー論をつかむ (テキストブックス[つかむ])

次に、千田有紀中西裕子・青山薫『ジェンダー論をつかむ』。本書もまた、語りかけ、問いかけてくる声。「好きなところから、好きなだけ読んでいい」という構成も、入りやすい。「ここが気になる人は、こちらのページを読んでみて」「もっと詳しく知りたい人には、こんな本もあるよ」と付箋いらずの道案内もありがたい。知らなかったこと、分からなかったこと、知っているつもり、わかっているつもりになっていたこと、目から鱗がサラッと落ちる。

 

遠く感じていたものを、手の届く距離に持ってきてくれるのは、語りかけ、問いかける声だった。せつなさが、ちょっと減った。